本日ここに私たちは「株式会社 ブルーブラックカンパニー」を設立いたします。
この組織を場として私たちが実現したいことは次のようなものです。
1.(人・地域・組織・社会相互の)関係性とネットワーキングにもとづく多様な表現を
「かたち」にする事業(出版をはじめとした表現活動)
2.私たちが長きにわたり追究してきた社会デザイン(ソーシャルデザイン)の
発想と方法論にもとづく多彩な試みを「かたち」にする事業(社会デザイン事業)
そうした目標を私たちが掲げる歴史的・社会的背景についての認識は次のようなものです。
21世紀に入り20年以上が過ぎました。
この間、地球規模での環境や地域紛争など前世紀からの宿題に加えて、
新しい形の貧困や社会的排除(social exclusion)の現れ、
グローバルな資本主義の展開によりもたらされた単純ではない社会課題、
さらにはこの数年の社会状況を支配し始めているといってもよい
感染症のとどまるところを知らぬ拡大(ウィズコロナ)など、
世界と日本はあらためて根本的な変革を求められる事態に直面しています。
異なる価値観を持つ人々が「共生」していくための知恵や仕掛けとしての社会と、
そこでの人々の参加・参画の仕方、また個々人の行動変容につながる社会環境形成のあり方を、
これまでの常識にとらわれず、根底的という意味でラディカルに革新(イノベーション)していくことが、
ますます求められています。そうした思考と実践のありようを、私たちは「社会デザイン」と呼んできました。
そもそもdesignとは、日本において考えられてきたような製品やサービスの
単なる設計や絵を描くことに留まるものではありません。
それは、先に述べた社会の仕掛けを大胆に組み替えていくことであり、
「いまここではないどこか」と「なにものか」を求め続ける一連のプロセスでもあります。
それは、まだ十分に可視化されてはいないものの、確かに存在感を強めている「ネットワーキング」とか
「リゾーム状」といったイメージと深く結びつくと同時に、
「市民社会」(市民による自律的で価値共創的な社会)の創造という
長年の「宿題」とあらためて向き合う問いでもありました。
私たちはこの間、こうした社会デザインをめぐる「鳥の眼」を育もうとしてきました。
その意図するところは、上記した社会デザインの発想と方法論を実践として具体化することで、
ともすれば現代の産業社会のなかで歪んだ相貌を持つに至ってしまった「社会」を、
人びとのwell-beingの方へ向けて組み立て直したいという積極的な試みでした。
他方、その試みは非営利・公共分野とも関わる社会的な活動や諸組織と協働しながら、
NGO/NPO・リスクガバナンス・ネットワークはもとより、
コミュニティデザイン・平和構築・安全保障、さらには、CSRや
ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス、社会的企業)など事業性豊かな領域におよぶ
具体的課題へのアプローチを通じた「虫の眼」をもまた持ちながら、
内外の多様なネットワークを活かして実践的に展開していくことにつながっています。
人びとの意識やライフスタイルの変容に目を向け、リアルな生活の場から社会の実相をとらえ直していくこと。
「社会を良くする」ちょっといいアイデアやスキルに留まることなく、
課題の解決へ向け、変革を現実のものにして「社会を変えていく」粘り強いプロセスを歩むこと。
そのための構造的な探究はもとより、社会の現場と往復し、
当事者性と内発性をそなえた実践的なモデルやプランを連続的に産み出して行くこと。
他者(の生活)と出会い、交信し、関係性を活かし編み直していくこと。
――そんな更新作業の連続はダイアログとしてのデザインであり、
「デザインをデザインし直す」ことにもつながり得るものではないでしょうか。
いうまでもなく、そうした実践の根底にあるものは、
地域や生活といった足元、根元からの人びとの営みです。
夢を現実のものにしたいと格闘する人たちが、「後戻りできない市民」として、
多様な経験を「継承」しつつ担ってきた歴史をふまえ、新たな方法論と表現を獲得していくことこそ、
私たちの社会的責任と応答能力(responsibility)の発揮でもあるはずだと思っています。
私たちが試みる「知の回遊」を通じてのやりとりや関わりのなかから、
私たちはできればソーシャルアート(これまでの枠組からの処方箋で行き詰まってしまった
地点からの飛躍と飛翔を可能にする、暮らしの日常の「技芸」としてのアート)としての
知的・精神的成果物を生み出していければと願っています。
私たちが共有し創造していこうとするリソースはそのためにこそ活かして行くべきものと位置づけ、
ここに株式会社ブルーブラックカンパニーを社会的な仕掛けとして発進させていくために創設するものです。
株式会社ブルーブラックカンパニー
*この文章は、代表の中村が2010年4月に、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科委員長として研究科履修要項の巻頭言で執筆した文章をもとに、その後の考え方の深化を加えてまとめたものです。社会デザインをめぐって20年以上にわたり、培ってきた考え方を象徴した内容であり、それは当社創設のミッションステートメントともなっているため、採用しております。
なお、21世紀社会デザイン研究科履修要項巻頭言は、2021年度まで中村執筆の文章がほぼそのまま研究科委員長名で掲載されてきました。2022年以降は、大きく変更されていますが、一部重複する部分のオリジナルの文章は上記の経緯の通り、中村によるものです。
万年筆インクの定番色、ブルーブラック。
なかでも伝統製法のブルーブラックインクは耐水性と耐光性に優れ、
文字色が青から黒へと経年変化するのが特徴です。
古典ブルーブラックインクがもたらす不思議な現象は、インクと紙が織りなす化学変化の賜物です。
インク中の鉄分は酸素と結合し、紙にしっかりと固着しながら次第に黒みを帯びていきます。
その間に青い染料は少しずつ色褪せるため、
まるで息づいているかのように筆跡の色が移り変わっていくのです。
「さまざまな人や場と出会って関係性を紡ぎ出し、また編み直していく中で、自らを新たな色に染め上げたい」
「予測不能な時代に生きながらも、社会デザインという方法を手がかりとして
持続可能な社会のあり方を模索し、未来へとつながる仕事を残したい」
そう願う私たちは、こうしたブルーブラックインクの可変性と耐久性に、自らの理想を重ねました。
元来のブルーブラックインクにはペン先が腐食しやすいなどの難点があり、
今では青と黒を調合した染料インクが主流となりました。
この新たなブルーブラックインクにも、私たちには自らの信条が重なって見えます。
異なる二色の融合から醸し出された、深く柔らかな色合い。
それは、創業メンバーである私たち二人が互いの個性を生かしながらコラボレーションを行い、
また理想を語り続ける「青臭さ」と労を厭わない「泥臭さ」を併せ持つことで、
新たな境地が切り開かれると示唆されているように思えるからです。
こうした決意と願いを社名に託し、
株式会社ブルーブラックカンパニーは2022年5月、最初の一歩を踏み出しました。
・社名 株式会社ブルーブラックカンパニー
・代表取締役 中村陽一
・創立 2022年5月2日
・所在地 東京都豊島区上池袋2-2-15
・資本金 300万円
・取引金融機関 三菱UFJ銀行池袋支店
・主な事業内容
1.地域振興・まちづくりに関する企画、調査、研究、講演、執筆及びその他付随する事業
2.ウェブサイト・書籍・冊子・印刷物等の編集、制作及び出版事業
3.文化・芸術事業の企画及び運営
4.自治体・企業等との共同事業の開発
5.人材育成のための研修・セミナーの企画及び運営
MAIL contact@blueblackcompany.co.jp